インボイス制度において帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合の特例について

 こんにちは!税理士法人IU Managementです。 

 本年10月1日より、インボイス制度が開始されましたね。

 適格請求書発行事業者からの仕入でなければ仕入税額控除を受けられなくなりましたが、一定の取引については適格請求書がなくても帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けられる場合があります。

 今回はその一定の取引について、ご紹介したいと思います。


① 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送

 「公共交通機関特例」とも呼ばれますが、対象となるのは「3万円未満の船舶、バスまたは鉄道による旅客の運送」です。
 3万円以上の場合や、航空券などは対象になりません。

 また、3万円未満か否かの判定は、1回の取引の税込価額により判定します。
 例えば、一人13,000円の新幹線の乗車券を4人分購入した場合、4人分の合計52,000円で判定することになりますので、この場合本特例の対象とはなりません。


② 適格簡易請求書の記載事項(取引年月日を除きます。)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引

 「入場券等回収特例」とも呼ばれますが、適格簡易請求書の記載事項が記載された入場券等が使用の際に回収され手元に残らない場合は、帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けることが出来ます。

 新幹線の乗車券や特急券は改札で回収されるのでこの特例を適用できるのではと思うかもしれませんが、JR各社が運営する新幹線においては乗車券や特急券に適格簡易請求書の記載事項は記されませんので、この特例の対象とはなりません。

 本特例は活用できる場面がかなり限られているものと思われます。

③ 古物営業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの古物の購入
④ 質屋を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの質物の取得
⑤ 宅地建物取引業を営む者の適格請求書発行事業者でない者からの建物の購入
⑥ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源又は再生部品の購入

 一般消費者からの仕入れが多いリサイクルショップ、質屋、不動産業者、中古車販売業者などが対象となる特例です。

 対象となる取引は適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産となるものの買取を行った場合で、棚卸資産以外(業務に使用する消耗品等)を購入した場合や買取の相手方が適格請求書発行事業者である場合には対象とはなりませんので注意が必要です。


⑦ 適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の自動販売機及び自動サービス機からの商品の購入等

 「自動販売機特例」とも呼ばれますが、ここで対象となるのは「代金の受領と資産の譲渡等(サービスの提供を含む)が自動で行われる機械装置であって、その機械装置のみで代金の受領と資産の譲渡等が完結するもの」です。
 具体例としては飲料の自販機やコインロッカー、コインランドリーやATM手数料などが対象となります。

 コインパーキングや自動券売機のような、代金の受領はその機械装置で行われるが資産の譲渡(駐車場の提供、食事の提供)等が別途行われるようなものについては対象外となります。


⑧ 適格請求書の交付義務が免除される郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス

 郵便切手、郵便はがき、レターパック等を購入した場合、帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けることが出来ます。


⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当)

 「出張旅費特例」とも呼ばれます。従業員等に支給する出張旅費等について帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられるという特例ですが、ここで対象として認められるのは「通常必要であると認められる部分の金額」です。

 この「通常必要であると認められる部分」とは《所得税基本通達9-3》の例により判定されますので、所得税が非課税の範囲であれば本特例の対象となります。 また、この特例は社内規程の有無や、概算払いによるものか実費精算によるものかなどにかかわらず、通常必要であると認められる部分は特例の対象となります。


 ここまで紹介したいずれも、特例を適用し帳簿のみの保存で仕入税額控除を受けるためには、帳簿に一定の事項を記載する必要があります。
 一定の事項とは以下のような内容です。

 ・ 帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入れに該当する旨
   例:①に該当する場合、「3万円未満の鉄道料金」 ②に該当する場合、「入場券等」

 ・ 仕入れの相手方の住所又は所在地
   例:⑦に該当する場合、「〇〇市 自販機」、「××銀行□□支店ATM」

 ※ただし、仕入の相手方の住所又は所在地については、次に該当する場合は記載不要です。
  ・上記①、⑧、⑨の特例に該当する場合
  ・上記③、④、⑤の特例に該当する場合
   ※ただし、古物営業法、質屋営業法又は宅地建物取引業法により業務に関する帳簿等(古物台帳など)に相手方の氏名及び住所を
    記載する必要がある仕入(1万円以上の古物の仕入など)の場合は、会計帳簿にも住所の記載が必要です。
  ・上記⑥の特例に該当する場合(一般消費者からの仕入に限ります。)


 インボイス制度が始まり事務処理が煩雑になった部分も多いかと思いますが、①の特例に該当する乗車券の購入や⑧に該当する郵便切手の購入、⑨に該当する従業員の旅費交通費の精算などは普段の業務の中で頻繁に出てくるものかと思います。

 今回ご紹介した特例を活用することで事務処理の軽減を図ることが出来る部分も大きいと思いますので、是非ご検討ください。

 ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください!

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